検証

　何度も言うが、そもそもがベタ過ぎる都市伝説で、冗談にしてもつまらんような話だろ？だからこそ、俺としても真剣に止める理由は見つからなかったんだ。「まあ、お前の気が済むんならやってみれば？」みたいな言い方で受け流したよ。そして俺に宣言してから二日ほど後の夜、あいつから自撮り写真が送られてきた。あいつは例の手術室に行って、加藤の名前のすぐ隣に、黒いサインペンで自分の名前を書いていた。にやけていた加藤の写真と対照的に、吉沢は思い切り緊張した面持ちだったよ。何だかこっちまで緊張して、茶化す気分にもなれず、「了解。早く撤収しろよ」とだけ返した。
　そして、その三日後、吉沢も死んだ。
　自宅マンションの中庭で転落死しているのを発見されたんだ。遺書は無く、家族も自殺する動機は見当たらないということで、事故死だろうということになった。
結局、加藤も吉沢もあの都市伝説の言った通り、名前を書いて帰ってきてから三日後に死亡したわけだ。

　知らなかっただろうが、そういうことが有ったんだよ。お前、東京に行ってから、疎遠になっちまったからな。いや、別に責めてるわけじゃないんだ。ああ、そうそう、電話したのは、俺がしでかしたことの話だったな。そう、もうわかるだろ。俺も同じことをやりに行ったんだ。あの病院に行って、名前を書いてきた。一昨日の話だ。