賢一と弓ちゃん、困難な門出

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 電車はまもなく二人が降りる駅に到着する。  車内アナウンスが、楽しい時が、終わりをむかえたことを告げた。 「お二人さん」  賢一と弓ちゃんが、降車にそなえて、並んでドア前に立つと。  突然、長身、ロン毛の男が、二人の背後から現れた。  王子寛。  プリンスヒロ、通称ひろ坊。  地元JKの間ではネットの貴公子として、知らないものはいない有名人だ。  賢一と同じ高校、同じクラス。  地元イケメン番付で、賢一が西なら、ひろ坊は東の横綱。  弓ちゃんが清楚系で、亜里沙がギャル系なのと同じで。  賢一が髪には何もつけず、服装も動きやすさ優先なのにくらべ。  ひろ坊は、髪型も服装も、こだわりの昭和レトロな王子。  YOSHIKIより、高見沢さんに近い、ビジュアル系。  料理系ユーチューバーとしても有名だったけど。  裸エプロンの動画といい。独自のひろ語といい、元僕は正直、くどすぎて苦手だったけど。  彼の特徴は、『様』扱いの、隠れファンが多いこと。  地元の表裏、二大イケメンが、そろって男子校、しかも同じクラスにいる。  限りある資源のむだ使い。  うちら世代、最大の損失。  二人とも空気読めよ!  地元の女子たちを嘆かす両巨頭が揃い踏み。 「嫁情報によると、駅の改札で、多数の子猫ちゃんたちが、君たち二人が出てくるのを、スマホ構えて待ちかねてるそうだぜ」  ひろ坊には自分で作った、『公式ファンクラブ』があり、申し込むと公式LINE、通称『ひろの嫁ネット』に、誰でもニックネームで参加ができ。  どこそこで、何高の誰と誰がデート中。  どこそこで、何高と何高のJKがもめてる。  『ひろの嫁ネット』を通じ、リアルタイムで地元情報を共有できるので、これはまんざら冗談でもないようだった。 「賢一、お前急に彼女作る宣言したらしいけど、この子と正式にお付き合いしているのか?」  賢一は、ひろ坊に頭ごなしに問われ、返事に困ってしまった。  
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