僕の死にざま

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 捨てた、失った、解放された。  僕は罪悪感を感じない悪魔に転生した。  翌日。  フェリーは大騒ぎになった。  フェリーは駅には停まらないし、地上の線路の上ではなく、夜の海上を航行する。  船内にいなければ、僕は海に落ちたことになる。  生徒たちが、僕がいないか、船内をくまなく捜索する。  変人の女男の生死など興味ない。  みんな迷惑そうだった。  僕は自分のせいで、楽しいはずの旅行を、だいなしにした。  お詫びのつもりで、汚鈴ちゃんに時折、悲鳴をあげさせた。 「悪魔は考えない、感じるまま、事象を起こす」  皇帝にいわれるがまま、僕は初めて『悪魔のしわざ』をした。  汚鈴ちゃんが、僕をいじめていたのは、みんなが知っていた。  懸命に僕を捜す『ふり』をする、真っ赤な目、ぼさぼさ髪の、すっぴんの汚鈴ちゃん。  時折、サメに顔を半分食べられたり。  時間経過にあわせて、バージョンアップした、汚鈴ちゃんにしか見えない僕の亡霊が現れる。  汚鈴ちゃんだけが大絶叫する。    とうとう、半狂乱の汚鈴ちゃんは、先生に抱きかかえられ、別室に隔離された。    フェリーが港に着くと、乗り込んで来た港湾警察官が、あわただしく別室に入って行った。  「退屈そうだな」  背後から皇帝の声がした。  確かに。  この程度のいたずら、小学生だって考えつく。  『悪魔のしわざ』とは程遠い。 「悪魔には、罪悪感、劣等感、恐怖心がないからな。人間でいう『達成感』てのが得難いのさ」  女子でいること、いい子でいること、何より生きることがつらかった。 「皇帝、自殺者を相棒にしたことはありますか?」 「自殺者は魂が壊れているから、悪魔には見えない、ゆえに出会うことはない。いっとくけど、俺は天国なんて見たことはないし、人の世以外の地獄なんてのも聞いたこともない」  フェリーに救急車が横付けされ、看護士に両脇を抱えられた、精神が壊れてしまった汚鈴ちゃんを乗せ、サイレンを鳴らして走り去って行った。 「皇帝、自分はいつまで悪魔でいられるんですか?」 「さあな。俺にはわからんよ。悪魔だって肩肘をはるな。ふざけたっていいんだぜ」  ならば、汚鈴ちゃんなどにかまっている暇はない。    
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