第1章

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 下手をすると熱中症でアパートの中で、自分は今まさに死にかけているのではないかとまで考え、頬を強めにつねる。  目は覚めず、ただ頬が痛む。  もう一度目を閉じ、後ろを振り返ると、そこにはやはり見た事の無い町並みが広がっている。  夢では無い異常事態に目と眉を引くつかせていると、不意に誰かに声をかけられた。 「よう、そこのお姫さま」  えらく低く渋い、身体がかなり大きな男性の声だった。  こんな事態だが、とりあえずライターをポケットに押し込み、猫缶片手に返事をする。 「あの、よかったらで良いんですけど、火貰えませんか?」  とりあえず、一服して落ち着こうと思ったのだが、どうもそうはいかないらしい。 「あ、何の話だ? それよりお姫さまよ。あんたいくらだ?」  声のする上の方に振り返ると、そこには身長が三メートルを軽々超える髭面でマッチョの大男が立っていた。  彩芽が一メートル七〇センチの身長なので、自分よりも身長が一メートル以上高い所にある顔を見上げる事になる。  大男と目が合うと、驚きのあまり口からタバコが零れ落ちた。 「見ない顔だが、どこの出身だ? かなり俺好みだぜ。よその町から来たのか? なあ、いくらだ?」 「な、な、な……」  彩芽は男の影の中で、逆光の中の顔を見上げながら考えた。     
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