187人が本棚に入れています
本棚に追加
下手をすると熱中症でアパートの中で、自分は今まさに死にかけているのではないかとまで考え、頬を強めにつねる。
目は覚めず、ただ頬が痛む。
もう一度目を閉じ、後ろを振り返ると、そこにはやはり見た事の無い町並みが広がっている。
夢では無い異常事態に目と眉を引くつかせていると、不意に誰かに声をかけられた。
「よう、そこのお姫さま」
えらく低く渋い、身体がかなり大きな男性の声だった。
こんな事態だが、とりあえずライターをポケットに押し込み、猫缶片手に返事をする。
「あの、よかったらで良いんですけど、火貰えませんか?」
とりあえず、一服して落ち着こうと思ったのだが、どうもそうはいかないらしい。
「あ、何の話だ? それよりお姫さまよ。あんたいくらだ?」
声のする上の方に振り返ると、そこには身長が三メートルを軽々超える髭面でマッチョの大男が立っていた。
彩芽が一メートル七〇センチの身長なので、自分よりも身長が一メートル以上高い所にある顔を見上げる事になる。
大男と目が合うと、驚きのあまり口からタバコが零れ落ちた。
「見ない顔だが、どこの出身だ? かなり俺好みだぜ。よその町から来たのか? なあ、いくらだ?」
「な、な、な……」
彩芽は男の影の中で、逆光の中の顔を見上げながら考えた。
最初のコメントを投稿しよう!