第1章

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 目の前に大きな人、つまり巨人がいる。  巨人症等で身長が大きいのでは無い事が、貴族の様な仕立ての良い服を着ていても骨格で分かる。  その巨人が、自分に何かの値段を聞いてきている。  何の値段を聞いているのか予想出来ない程、バカでも子供でもない。  となると、もはや取るべき行動は一つである。  彩芽が何にも言わずに巨人から逃げようと駆けだした途端、石畳の上ですり減ったサンダルが滑り、無様な格好で転倒する。 「うわっ!?」  しかし、地面につこうとした手は地面に届かず、身体が寸での所で支えられている。  気が付くと、大きな手が彩芽のシャツに描かれた背骨の柄をむんずと掴み取っていた。 「なんだいきなり、大丈夫か」  巨人の手に捕まりながら、そんな事を言われる。 「あ、ありがと」  思わず素直に礼を言ってしまう。 「気をつけな」  そんな事を言って聞かせる巨人。  顔つきは堀が深く、イメージの中のフラメンコダンサーを連想させる色気と濃さがある。  よく見れば、長い髪と髭を細かく編み込んでいて、髪を後頭部でまとめており、かなりオシャレでもあった。     
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