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扉には看板があり「ブルローネ本店」とだけ知らない文字で書かれていた。
巨人は彩芽の猫缶での殴打も、空いた手での猫パンチも気にする事無く、まっすぐに進む。
そこは、作り物感ゼロ、本物の豪華な作りをした屋敷とでも呼ぶべき建造物に見えた。
出入口のある広いエントランス。
そこを見下ろす吹き抜けの二階通路には、半裸や全裸の女性が何人も立っていて、奥の部屋からは艶めかしい声が聞こえてくる。
「おろして~助けて誰か~」
そこにいる誰もが巨人の肩の上で助けを求めて騒ぐ彩芽を、何事かと見るが、特に助けてはくれない様だった。
アウェイなのは分かっているが、このままだと大変な事になる。
だが、こんな状況で彩芽は、周囲の女性や自分を担いでいる巨人が日本語以外の言葉を話しているのに、自分が言葉や文字を理解して、その上会話が成立していた事に気付き、自分が異世界の言葉を自然に話している事に対して変な感覚を覚えた。
脳の中に、やたら高性能な自動翻訳アプリを知らない間にインストールでもされたようだった。
通路の突き当りにあるホテルのロビーの様な開けた空間に出ると、巨人がおもむろに立ち止まった。
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