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そこには、優雅にソファに腰をかけて、指の爪の手入れを使用人の少年にさせている一人の少女がいた。
少女は悪趣味な程に豪奢で装飾過多な、真っ赤なドレスに身を包んでいる。
だが、少女の当人はシミもシワも何もない、透明感のある真っ白な肌に華奢な身体を持ち、黄金律の中に全てが収まりそうな程に美しい顔立ちで、人形の様でさえある。
そのアンバランスさ、一見感じる儚さと同時に見て取れる堂々とした態度が、少女から異様な雰囲気を醸し出していた。
「アコニー、今日はこの姫と一晩大部屋を貸し切るぜ。最高の酒と果物、それと媚薬を溶いた香油と蜂蜜を頼む」
巨人にアコニーと呼ばれた赤いドレスの少女は、巨人の背中を猫缶でポカポカ叩いて息を切らせて抵抗する彩芽を見る。
それから、良くわからないと言った怪訝な顔をする。
使用人の少年に手入れが終わっている指で合図をして、爪の手入れを一旦止めさせてから、ソファから立ち上がると、ゆっくり優雅に口を開いた。
「ストラディゴス様、失礼ですが……その子は、どちら様で?」
アコニーの言葉に今度は、ストラディゴスと呼ばれた巨人が、良くわからないと言った顔をする。
ストラディゴスの肩の上では、ジタバタと「助けて~! って言うか私の話を聞け~!」と抵抗を続ける彩芽の姿がある。
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