第1章

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 その合否通知の電話を待っているのだが、それが来ないのでぐったりとしているのだった。  だが、直接会った事も無い社長にも夜逃げしたくなる理由があったのだろうと、そこを責める気にはならなかった。  人生山あり谷ありでも、他人の谷のツケが回ってくる事をイチイチ責めていては、キリがない。 「変えられるのは、いつだって自分の人生の山と谷だけだ」  と、最近誰かがテレビで言っていたなと思い出す。  良い事言うじゃん、と曖昧に思い出しながらも、どこかで少し寂しいなとも思った。  だが、まあ、余分な金こそ持って無いが、すぐに死ぬほど切迫している訳でもないので焦る事も無い。  スマホを見ても、スパムメールさえ来やしない。  歯で舌ピアスを引っかけ、カチカチと口の中でピアスを遊ぶ。  彩芽が暇な時や、考え事をする時に出る癖である。  もっとも、パンツ一枚で畳の上に寝転がり、豊満な胸に畳跡をつけて床に押しつぶす状況では、頭は欠片も働いてはいない。  正直、おっぱいなんて大きくても、やたらと肩がこるし、こういう体勢では邪魔でさえある。  冷たい床を探して本能のままに転がりまわるのにも、いい加減限界があった。     
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