第1章

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 この時の室温は、窓を開けているのに(道に面したベランダには、塀の目隠しと植え込みが一応ある)三十六度を超えていた。  体温と同じぐらいあり、かなりの暑さである。  カチカチカチ……  舌は動くが、変わらず頭が働いていない。  明る目の金髪に染めている背中まで届く長い髪が、汗で肌にべっとりと張り付き、うなじの蒸し暑さに比例して不快感が増していく。  散らかった床を這って、すぐそこの台所にある小さな冷蔵庫まで行くと、中には猫缶とビール(別に銘柄にはこだわっていない)と、おつまみのサラミしか入っていない。  ビールを二缶出して、一つをおでこに、もう一つを股間に挟むとパンツが缶の水滴でじんわりと濡れるが、引き換えに太い血管を流れる血液が冷えていき体温が少し下がる。  人様には見せられない恰好だが、少しだけ生き返った気がする。  だが、すぐにビール缶が温くなり、先ほどの快感は消えてしまう。  このまま、だらけていても埒が明かない。  上体を起こすと、おでこの温くなったビール缶を開けて、数口だけグビグビと飲んで乾いた喉を潤す。  また少し生き返った気がした。  ぬるめのクールダウンを潤滑油にして、ようやく動き始めた頭で考える。     
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