第1章

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 そうだ、と思い出し、壁にかけてある黒いパーカーのポケットを弄ってクシャクシャのタバコの箱(中南海)とノーマルのジッポライター、黄色いハートのシールが貼ってある携帯灰皿を取り出し、ジーパンの尻ポケットに突っ込む。  さっきまで股に挟んでいたビール缶を特に思案する事も無く冷蔵庫に戻そうとすると、冷蔵庫の明かりがつかない事に気が付いた。  気が付けば部屋の電灯も扇風機もスイッチがONの状態なのに停止している。 「え、冗談でしょ!?」  玄関の上にあるブレーカーを見ると、どれも落ちていない。  夏場にエアコンだけでなく、冷蔵庫と扇風機までもが同時に死んだら悲惨だったが、どうやら停電らしい。  都会で停電なんて、かなり珍しい。  だが、まあそれなら、そのうち復旧するだろう。  まだキンキンに冷たい猫缶を冷蔵庫から取り出し、大学生の時に女友達から誕生日にプレゼントされて以来なんとなく着ているリアルな骨柄Tシャツを着る。  髪を黒いゴムでまとめて雑にポニーテールにすると、ようやく外出の準備が整った。  残念ながら、メイクをする気力は残っていなかったが、合コンに誘われている訳でも無しに気にしない事にした。     
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