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「?」
アパートの自分の部屋を出たつもりだったのだが、何かおかしい。
普段ならば、そこには二階に上がる階段の影が落ち、狭い路地の光景が広がっている筈だった。
大家さんの壁に貼ってある、いつも目が合う選挙ポスターも無い。
それどころか、どこを見ても行きつけの銭湯の煙突は見当たらないし、ファミレスのある大通りに繋がる道も無い。
使い古したサンダルで踏み出したそこは、西洋建築の街並みが広がる、どこか知らない海沿いの街だった。
どうやら高台にあるらしく、眼下に広がる町並みが日の光を反射してキラキラと煌めき、頬を撫でる海風がえらく気持ちいい。
これが海外旅行なら、写真の一枚でも記念に撮るのだろう。
だが、そんな発想にはならなかった。
反対を向くと、そこには丘の上に西洋建築の砦らしき物が見える。
彩芽は、状況が分からず、部屋に戻ろうと後ろに下がる。
すると、そこには壁があった。
後ろを振り返ると、そこには今さっき出てきたアパートの扉が、無い。
代わりに見た事も無い大きな建物の、観音開きの重厚な扉が閉じた状態で、そこにある。
「えええぇ!?」
まさにキツネにつままれた様な感覚であった。
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