雨は嫌い

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私はしばらく携帯をいじった後席を立ち、のろのろと外を歩き始めた。駅前は肩を寄せ合い歩いている恋人たちでいっぱいだった。夏の日差しがまぶしい。もうすこし早歩きしないと、日焼けしてしまう。そう思った瞬間、肩に大粒の水滴が落ちてきた。 雨だ。 こんなに晴れているのに、突然の雨。太陽は容赦なく人々を照り付けているのに、大粒の雨が大量に舞い落ちる。これが狐の嫁入りってやつかと私は既にびしょ濡れになりながら立ちすくんでいた。 人々はコンビニやホームへ走って避難している。私はこのまま濡れていたかったので誰も居なくなったベンチの傍で、空を見ながらぼうっとしていた。風邪でもなんでも引けばいい。もっと長くこの雨が続けばいい。このにわか雨はいずれすぐやむことはわかっている。でも、もっともっと降り続いて、この大粒の雨で私の体を洗い流してほしい。なにもかも、無かったことにしてほしい。全部悪い夢であったと。私は泣いていた。やっと泣くことができた。この雨だから、周りに人も居ないから、誰もきっと気づかない。どうかこのまま降り続いて。
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