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【羊を数えて眠ろう】
「きみには私の目をあげよう」
そう、最初の科学者は言った。
「ならば私はこの声を」
二人目の科学者はそう言って手をあげた。
「私は右手を」
「私は左手を」
「私は足を」
「私は胃腸を」
そうしてほとんどのパーツが埋まった最後に、この企画の発案者である博士が言った。
「ならば私は心臓と脳を」
そうして誕生したアンドロイドは、博士の希望通り、『ジャニアス』と名付けられた。
* * * * *
「アンドロイドとの生活、ねぇ」
アンソニーは帰宅した妻と共に夕食を作りながら、このたび研究所で完成したアンドロイドの行動分析に役立てるためのデータが欲しいから、家族の一員として一緒に暮らしてもらえないかと持ちかけたところ、サリナは興味なさげに、というよりあからさまに、マイナス感情たっぷりに返答をくれた。
だがそれくらいはアンソニーも想定内だったので、じゃあ僕が携わった研究の成果として、一目見てくれるだけでいいから、と言いくるめると、その週末に一時的にアンドロイドと一緒に帰宅するから、と話を纏め、いいとも悪いとも言っていないのに、
「ありがとう、愛してるよ」
そう言ってサリナの髪に口づけを落とし、鼻唄混じりに出来上がったサラダをキッチンテーブルへと運び、「それじゃあディナーにしよう!」と一人いつだって勝手に仕切ってしまうアンソニーに、サリナは妻というより自分は彼の母親か逆に妹か何かと思われてるんじゃないかしら、そんな風に思うもそれは苦笑と共に受け入れられてしまう程度の愚痴というよりはむしろ惚気に近い感情だった。
* * * * *
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