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約束の週末。その日、仕事のなかったサリナは家にて夫と、夫が連れてくるアンドロイドの訪問をそわそわとして待っていた。
相手はアンドロイドなので、どのようなおもてなしが必要なのかわからず、けっきょく何もしていない───せいぜいがいつもより丁寧に掃除をしたくらいか───サリナだったが、ガレージに車が戻っていた音を聞き、玄関前まで迎えに出てやった。そして。
「さぁ、ジャニアス。ここが今夜のきみの寝る場所だ」
そう言ってアンソニーがその背を押して家の玄関へと通し入れたのは、見た目は十歳くらいの少女だった。
少女はギュッとアンソニーのズボンの端を握り締めながら言った。
「初めまして。わたしはジャニアスと言います。わたしは笑うことが出来ます。泣くことも出来ます。次に愛することが出来るようになりたいと思っています」
なんという自己紹介だろう。
サリナは思わず呆気に取られ、夫の顔を見てしまったが、アンソニーにとっては彼女は───そう呼んで差し支えないだろう───研究段階から慣れしたんだ対象なだけに、特段、何も思わなかったのかもしれないが、サリナとしては色々と追求したいことだらけだった。
(同じ人間だと思って接して欲しいって言われていたけど、これではまるで)
見た目的には丸っきり人間の子供そのもの。サリナが担当している小学校のクラスに紛れていても区別などつかないだろう。それだけに。
サリナは膝を折り、ジャニアスと名乗ったアンドロイドの少女の視線に合わせ言った。
「初めまして、ジャニアス。私はサリナ。あなた、とっても可愛いのね。だからもっと自信を持って話しましょう?」
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