【羊を数えて眠ろう】

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 その夜。  アンドロイド用の食事を彼女の前に並べ、自分達とは異なるものを食しているジャニアスの姿を、思わず痛ましい目で見てしまったサリナの職業病と言えよう。食べ物アレルギーがある子は多少、他の生徒とは異なる食事を摂ることはあっても、ジャニアスに与えられたものは完全に見た目的に人間の食べ物とは思えないものだったのだから。  これだけ見た目をそっくりに作っておきながら。  その残酷さに気づかないところが、科学者のような頭の固い連中にはわからないんだわ、そう思い、ジャニアスを客間に寝かせ───それすら起動スイッチを切ってただ布団に横たわらせただけだ───、二人の寝室に戻ったサリナは、アンソニーに言った。 「どうしてあんな残酷なことを言わせたの?」 「残酷? 何がだい?」  ああ、ほら、やっぱり分かっていない。  サリナは思わず怒りそうになったが、いや違う、彼は、彼等は純粋に気づいていないだけと自分を諌め、最初の挨拶よ、とそこから切り出した。 「あんな活発そうな少女のアンドロイドを作っておいて、『次は愛することを知りたい』だなんて、どういうプログラミングを組んでいるの? あなた達の最終的目的はなんなの? これからの高齢化社会を見越して、例えば老人ホーム用のおしゃべりアンドロイドを量産するのが目的だというなら、彼女が知るべきは『労りの愛』ってとこかしら。それとも十代の少年少女の戯れのような恋愛感情? それだと人間相手には支障があり過ぎるわね、あぁそうか、私達子供のいない夫婦が適任とされたのだったら、少子化対策か何かのため?」  それでもアンドロイドの子供を持つことが、少子化現象のどういう対策になるのか、サリナは考えつかなかったが。  サリナの疑問にアンソニーは、逆に訊くけど、と切り返してきた。
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