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しかし、僕とは年齢が二つほどしか違わないのにオンラインゲームをよく知らないのは、なんだか可愛く思えてくる。
「そっとしておけばいいと思うよ」
「それでいいの?」
僕の一言に妻は怪訝そうに問いかけてきた。
「今はただ、ゲームで負けたのが悔しくて部屋で拗ねているだけだから。時間が経てば冷静になって戻ってくるよ」
「でも、ゲームでしょ? ゲームでそんなに本気にならなくても……」
ゲームをやらない妻にとっては本気になってしまうことがわからない。
「ゲームでもやっぱり負けた時は悔しくもなるよ。それにやってるときは本気だからから尚更ね。お母さんには難しいかもしれないけど、そういうもんなんだって」
「そう。ならお父さんの言うとおりに今はそっとしておきましょうか」
一応僕の説明で納得してくれた妻はリビングに戻り夕飯の準備をする。
「まだ私たちもご飯食べてなくて。お父さんはさきに食べてる?」
「いや、戻ってくるのを待つよ。せっかく家族全員揃っているんだから3人で食べたいし」
「そうね。じゃあもう少し待っててね」
そして息子が戻ってくるのを待ちながら、僕は妻と一緒にリビングでテレビを見ながらくつろいでいた。
数分後、落ち着きを取り戻した息子がリビングにやってきた。
「――お母さん。お腹すいた」
お腹を空かせた息子は、さっきのこともあり少し気まずそうにしている。
「はいはい、今からご飯にするからね」
対して妻は特に気にした様子もなく普段通りの優しい笑みを浮かべていた。
「落ち着いた?」
「あ、お父さんお帰りー」
「ただいま。お母さんから聞いたよ。ゲームで負けて飛び出したって」
「……ま、まあ」
僕から視線を逸らし、歯切れ悪く答える息子。そんな息子を見ていると笑えてきてしまう。
「あまりお母さんに心配してかけちゃダメだよ」
「はい……」
帰ってきて早々あんなことがあったが、うちの息子は聞き分けがよくて助かる。まるで親バカのような台詞だが自分の子供なんだからそう思ってしまうのも仕方ない。
「はーい。ご飯にしますよー」
おかずを乗せた皿を妻がテーブルに運んできた。
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