俺は勃起不全

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現実問題、老いてく体が、 勃起しなくなったって話自体、 生身の体なら受け入れろよって話だよな…。 でも、これは受け入れがたいのだ。 男が男として持ちうる男の機能。 それは当たり前のようでいて、 大好きな機能だったし、 少なからず快感でもあった。 そんな雄々しい機能が、 俺の体から失われていくって事…。 悲しいだとか。 寂しいだとか。 やるせないだとか。 そう言った、 寂寥感(せきりょうかん)が、 俺の体を満ちて来るのだ。 この気持ちは、 機械の体を持つ者には、 解らないだろう。 生きてるって感覚の一つが喪失するのだ。 簡単に諦めきれる事ではないのだ。 「悪いが私の手には負えない。」 「スマナイね。」 先生はそう言った。 否(いいや)。 そう言うしかないのだろう。 俺は…。 「はい。」 と、答えた。 ・・・・ 俺は自宅に帰った。 俺は自宅で一人で居た。 俺は一人暮らし。 近所付き合いはしているが、 家族は居ない。 家族は…。 老衰で死んじまったよ。 あの時は…。 泣いた。 辛かった。 悲しかった。 機械の体なら修理することができる。 しかし生身は…。 失ったら最後だ。 もう、元には戻らないのだ。 「ハァ…。」 それは置いておいて。 俺は『股間のソレ』について考えた。 「ホントもう、勃たないのかよ…。」 俺は…。 スボンを脱ぎ。 パンツを脱ぎ。 下半身マッパになった。 この工程。 何度繰り返して来ただろう? 何度やってもワクワクしたモノだ。 これから始まる、素晴らしい時間。 何事にだって代えがたい、発射感。 だが。 今は不安だ。 どうせ勃たないんだろ? どうせ、出ないんだろ? そんな感情が俺を支配する。  け  ど  ! もしかして…!!  ッ  ッ 俺は湧き上がる一縷(いちる)の望みに賭け、 『ソレ』を手で握った!! 「フォォオオオオオオオオ オ オ オ ! ! 」 俺は手で『ソレ』の周りを上下した!!
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