32人が本棚に入れています
本棚に追加
1.再会の価値は
フリーズしている僕を見て、黒井さんはきょとんとしている。
「あの、どうしたんですか?」
「あ、ごめんね黒井さん。久しぶり」
「え……っと、柿崎くん!? 奇遇ですね」
少しの間があって、懐かしいソプラノの綺麗な声で返事があった。やっぱり黒井さんは素敵だ。
「本当に、そうですね、告白したとき以来ですね」
また間があって
「ええ、それ以来ですね……」
心は弾んで今にもスキップをしそうな勢いだ。しかし、今の黒井さんに彼氏はいるのだろうか?
そうだ、思い切って聞いてみよう。と、思ったのだが、
「それでは、また」
「あ、はい」
彼女は笑顔を浮かべて部屋を離れてしまった。残念。
その時、カラスのような黒い鳥が彼女の部屋に入っていったのだが、さして気にはならなかった。
最初のコメントを投稿しよう!