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7.奇跡の一手
「さあ、なんでも言ってみなさい」
その言葉を聞いて僕は自分の夢を言った。
「ナアマさん、好きだよ」
「…………!!!!」
それを聞いた途端に、彼女はのけぞってしまった。
「どうしたの? 夢を見させてくれるんでしょ? ぼくとお付き合いしてよ」
死ぬ前に、いや、せめて彼女に看取られて死にたくなった。そういう夢を見たっていいじゃないか。
「好きだよ、なんて、そんな……、私そういうの慣れてないよ」
さっきまでの余裕ある態度が一転。まるではじめて恋を知った少女のようにおどおどとしはじめた。
「慣れてないって、あんなにステキなキスをしてくれたのに」
「それとこれとは話は別。あなたこれから死ぬのになんでそんなこと言えるの?」
「キモイとか言わないで口付けしてくれるんだもん。うれしかった。あなたの彼氏として死なせてよ」
死ぬ気になればなんでもできるとは言うが、ここまで自分が言えるとは思わなかった。
「あなた、あまりにも安過ぎない? あ、そうだ。きっと理々さんの姿で彼女になって欲しいのよね?」
焦り気味の彼女は何やら呪文を唱える。ところが。
「あ? あれ? 変身できない!?」
理々さんなんてもういいんだよ。
その時、黒い鳥がバサバサと近づいてきて、何かをささやいているようだ。
「あ、あなた、ほ、本気で私とつきあいたいの?」
「うん。夢を見させてくれるんでしょ? ナアマさん」
ぼくの方から彼女に近づいていった。もう死ぬんだ。その前に。
「……!!」
彼女のくちびるを逆に奪った。その瞬間に彼女の体がまばゆい光を放つ。僕たちはその中へ吸い込まれる感じがした。
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