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3.悪い知らせと大雨の夜
黒井さんとデート、それだけが楽しみで毎日過ごしていた。
もしかすると、話が弾んでこのままお付き合いまで一気に行けるかも……!?
そんなことを考えていると、大家さんに会った。60歳近くの人の良さそうなおばあさんだ。
何の気なしに話してみる。
「あら、機嫌がいいねえ。最近いいことが会ったのかい?」
「いえ、隣の女の人と最近仲良くなりまして」
するとおばあさんは顔を曇らせて、
「あれ? おかしいねえ。あなたの家の隣は空き室だったような……」
そうかな? と思ったけど、記憶違いだろうと思い、さして気には留めなかった。
それよりもデートのことで頭がいっぱいだった。
あれこれと妄想を抱いているところに高校時代の悪友だった高田からメールが来た。彼は地元で就職している。
『黒井さん、婚約したらしいぞ』
な、何!?
それは俺を思い切り地獄へと叩き落とした。繰り返すが隣の部屋には男が来た形跡は見えないし、夜中に声が聞こえたこともない。でも高田が嘘をついているとは思えない。この情報は本当なのか?
ただ、なんとなくだが闇の気配を感じる。まあ気のせいだろう。中二病じゃあるまいし。 次の日の夕方、たまたま黒井さんと玄関前で一緒になった。いつも通りに会釈して来た彼女に俺は、思い切って聞いてみることにした。
「あ、あの、高田くんから聞いたんだけど、結婚する予定とか、ありますか?」
また数秒間の間があって……。
「はい……、そうです。すみません」
情報は本当だ、とてもやるせない気持ちになってしまった。なぜ食事にOKを出してくれたのか、からかい半分だったのか、今の僕にはわからない。
「そうですか、幸せになってください」
だから、そういうのが精いっぱいだった。
「ありがとうございます」
一瞬黒井さんがニヤッとした笑みを浮かべ、黒い鳥といっしょに部屋に戻っていった。
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