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4.再告白と甘い誘惑
黒井さんの部屋の中はとても片付いていた。余計な飾りつけのないシンプルな調度品が置かれ、テーブルや食器などは黒で統一されている。
リビングのテーブルにはお茶が置かれていた。そこに向かい合わせで座る。
「話したいことってなに?」
「あのね……、私のこと、今でも好き?」
いきなりなんだと思った。
「好き、だよ、もちろん」
雰囲気づくりも何もあったもんじゃない再告白をする羽目になってしまった。
「そう……、うれしいわ」
だんだんイライラして来た。黒井さんは僕のことをからかっているのだろうか。いくらなんでもほどがある。
「うれしい、って何? 僕のことバカにしてるの?」
そう言った途端、黒井さんは泣き出しそうな声で僕に言った。
「くすん、そんな風に言わないで……、ねえ、優くん、寝室に来て」
寝室に行くと聞いて今までのイライラが吹き飛んだ。それが何を意味するのか、経験のない僕でもはっきりとそれが分かった。
どきどきと脈打つ心臓が止まらないまま、黒井さんに手を引かれて寝室に入った。
そこでまず目を引いたのは、色も大きさもまばらな水晶玉のような球体がいくつか並べられていた。それは奇妙な輝きを放つ。そう、まるで生きているかのように。
あとは鏡台とベッド。こちらも黒で統一されている。苗字に「黒」が入っているからなのだろうか。
「こっちに来て」
誘われるままにベッドに腰掛けると、あこがれの黒井さんの隣。息づかいまで聞こえてくる。
でも、彼女には婚約者がいる。なぜこんなことをするのだろう。
「黒井さん、あの」
「理々って呼んで、優くん」
「理々、さん、どうしてこんなことするんですか?」
僕のストレートな問いに、理々さんはしばらく考えて、思わぬことを口にした。
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