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気がかりなのは、紀花の隣りの田村悠介という男だ。特別とは無縁のこの高校に、なぜ偏差値七十超えのこいつがいるのか聞いた事がある。彼はこう答えた。
「家から一番近い学校を選んだだけ」
しかもこの悠介という男、顔もいい。男のくせに肌が透き通るように白くて、目も鼻も口も計算されたような位置にある。男の俺が見ても綺麗だ。
俺が悠介に勝っているのはたぶん身長くらいだ。だがそれも数センチ。俺は一年の春休みから五センチ伸びて、今百八十五はある。しかし内心、もう伸びないでくれと願っている。
この頭も顔もいい悠介が紀花の隣りにいる。授業中も小さな声でお喋りしているのが俺の耳にも届くとちょっとイラっとはするが、悠介はいいやつだ。親切丁寧に勉強も教えてくれるしとっつきやすい。
今年同じクラスになったこの悠介と、紀花と、俺の隣りの我が校きっての情報通佐々木あずみの四人は、ほとんどいつも一緒にすごしている。高校二年の今が一番楽しいかもしれない。
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