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「もうおやつの時間だ。帰らなきゃ」
「そうだね。……ねぇ。1つだけ聞いても良い?」
「……?」
私は、私の横に立って足元までくる波を眺めている海さんを見て首を傾げる。
「もう、会えない?」
「……え?」
「また会いたいなって、思ったから……」
海さんが赤くなりながら私に尋ねる。
海さんも赤くなるんだ……。
「海さんは夜にしか来れないんですか?」
私はつられて顔に熱が集まるのを感じながら、これは太陽の暑さのせいだ、と心の中で誤魔化して海さんに尋ねる。
「昼間でも問題はないよ。夜でもいいけど。ここから家近いし」
「私もです。……あの日以降、夜に来なかったのは、次の日の朝にバレてこっぴどく怒られたからなんだよねぇ……。主に兄弟に……」
私がそう言って苦笑すると、海さんは一瞬驚いた顔をしたあと、あはは! と声をあげて笑った。
「そんなに笑わないでよ!」
「あはは! ご、ごめんごめん」
「悪いと思ってない!」
「思ってるよ~」
そう言いながらも笑い続ける海さん。
私にバシンッ! と背中を叩かれて、痛いっ! と叫ぶ海さんを無視して、ゴミ袋を持って歩き出した。
「ごめんってば~! 波~!」
「うるさい! ……私はこっちだから。それじゃあまた」
「……! うん、また」
私たちはお互い微笑んでから、手を振って背中を向けた。
私は後ろの海さんに届くように、少し大きめの声で歌を歌った。
完
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