海の歌姫

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ニコニコと微笑む男性は、黒のTシャツにデニムのジーンズという,身軽な格好だ。 顔は整っていて、髪はくせっ毛なのか、ピョンピョンと跳ねていたけれど、ふわふわな感じだ。 簡潔に言うとモテそう。 否、絶対モテるだろう。 「照れてるの? 可愛いね」 ……モテそうだけどチャラい。 「あなたは?」 「俺? 俺はねぇ~。(かい)」 「……」 私から質問しといてなんだけど、反応できん……! 「お嬢さんは?」 「……(なみ)」 「可愛い名前だね。ところで、その空き瓶、どうするの?」 「ゴミ箱にポイします」 海と名乗った男性は、袋いっぱいに集められた空き瓶を指差した。 私はゴミ箱がある方を指差してから首を傾げる。 「もしかして、ゴミを集めてたの?」 「はい。空き瓶、割れちゃったら危ないですし……」 「自主的に?」 「自主的に」 いい子だね、と微笑んだ海さんの意図がさっぱりわからない。 何で話しかけて来たんだ……? 「そういえばさ、さっき歌ってた歌。俺、あれにつられてここまで来たんだけどさ」 「いやぁぁ! 恥ずかしい!」 私は回れ右をして走って逃げ……。 「待って!」 ようとしてできなかった。 海さんが私の左腕を掴んだからだ。
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