海の歌姫

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「うぅぅぅ~~~~。離してください~」 私は顔を背けたまま腕を上下にブンブンと振る。 けれど男の人の力に敵うはずもなく、私はそのうちに腕が疲れてきてやめた。 「ごめんね~。でも、もう一回聞きたくてさ」 「き、曲は教えます。なので家に帰ってからでもネットで調べてください!」 「だめ! それじゃダメ!」 私は海さんの勢いに、思わず背けていた顔を海さんに向けた。 海さんはさっきとは違う真剣な顔で、けれど悲しそうな瞳で私を見ていた。 「な、何で……ですか」 勢いに圧倒された私は言葉が詰まった。 「5年前。俺が中学に入りたての頃、ここに来たんだ」 5年前で、中1……!? 「も、もしかして。海さんって、今、高校3年生ですか!?」 「そうだけど。波……。それ、そんなに驚くこと?」 「だって……。私と同級生……」 「へぇ~。波も高3なんだ」 うそぉ~。 私より絶対に年上な感じじゃん! 同い年で、こうも差が開くものなのか……。 「あ、すみません……。続けてください……」 「あの日は夜だった。俺がここに来たら、女の子がいたんだ」 私が逃げないと分かったのか、海さんは私の腕を離してくれた。 そして遠くを見るように、海を見た。
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