第一章

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龍子の不吉な予言に、俺は不機嫌な顔をする。それを知ってか知らずか龍子は大きく背伸びすると、椅子からすっくと立ち上がった。反動で龍子の胸が揺れ……いや、何でもない。 「わたしは寝るよ。つかれちゃった。じゃあね」 「ああ、龍子」  俺の呼び止めに龍子は意外そうに振り返る。用意していた言葉は、すこし喉につっかえた。 「その、おやすみ」  そう俺が言うと、龍子は微笑んだ。 「あまのじゃくな癖に律儀なところ、嫌いじゃないよ」 「マイペースなおとぼけものに言われたくねえ」 「そ。おやすみっ」  茶化したような物言いに、俺は恨めしい目つきを返した。まあ、龍子と俺は全くの他人というわけではないらしい。それからカッサードをケースにしまって、俺も早い眠りについた。    その晩は、すこし早く目が覚めてしまった。寝ぼけながらも俺はライターを取り出してタバコを吸おうとした。まあ法に触れる薬でないからいいだろ。  ぼけっと窓を眺めて、初めて異変に気付く。窓ぎわの机にあった透明な花瓶に、真っ赤な薔薇が活けてあった。花を飾る趣味はない。俺は部屋へと振り向いた。  
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