第一章

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部屋に誰かいる。ベッドの真向いのソファに、月明かりに照らされた少女が座っていた。ベットに座った俺は声をかけた。 「こんばんは、女王陛下」  真っ白な肌に、灰色の髪をなびかせる少女はあどけなく笑った。 「ボクが女王ってわかってくれたんだ? うれしいな」  女王は唄うように喜ぶと、ベッドに腰掛けた俺をのぞき込むように、顔を近づけてくる。長いまつげと、透き通った紫の瞳が目の前に迫り、俺は息を呑む。 「今日はありがとう」  と女王は感謝の言葉を告げた。俺は大きな二つの瞳へ、問いかけた。 「今日は、か。あんたは俺たちに何を期待してるのさ。訳ありらしいけどさ」  頬杖をついた俺がそう聞くと、彼女は上体を起こして居住まいを正す。 「軌道エレベーターが占拠された。人間の軍隊は、軌道エレベーターを破壊するべく、行動を開始している。ボクは、占拠された軌道エレベーターを、無傷で回収したいの。けれど、ボクの軍勢は来るべき時に備えて待機中だ。ボクにできることは、お兄さんと龍子さんを頼ることだけなの」 「訳がデカすぎやしないか……」  龍子とセットで、何をやれと言うのかね。 「頼みたいことがある」
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