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俺は、浜辺にトランクを置いて、カッサードを立ち上がらせた。
「んじゃ、一仕事と行きますか」
俺はにやっと笑いカッサードの右手を掴んで、目を瞑る。高揚感が神経を駆け巡る。
「ジャックイン!」
カッサードの右手にあるジャックポッドへ親指を押し込むと、脳神経とカッサードのクラウドが接合する。俺の意識はLANを通過して、アンドロイドのローカルネットに飽和してゆく。 シーケンス制御が進行するにつれて五感は溶けて、俺の魂はカッサードの『ソウルサーキット』へと転移しはじめた。
「わーだらしのないかお」
「やかましい。カッサード! ゲットレディ!」
俺は、肉体を手放した。
ソウルサーキットに魂が宿ると、五感のとろけるような感覚は失せて、もう一度現実が舞い戻ってくる。
両手を目の前に突き出す。光り輝くスチール製のアームは、まぎれもなくカッサードの両腕だ。いま俺のビジョンにはぽやんとした龍子と、うなだれる俺の抜け殻が見える。
まさに、今の俺はアンドロイドだ。
「約束だ。龍子は俺の身体を守ってくれよ」
「うん」
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