第一章

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 俺は、浜辺にトランクを置いて、カッサードを立ち上がらせた。 「んじゃ、一仕事と行きますか」  俺はにやっと笑いカッサードの右手を掴んで、目を瞑る。高揚感が神経を駆け巡る。 「ジャックイン!」  カッサードの右手にあるジャックポッドへ親指を押し込むと、脳神経とカッサードのクラウドが接合する。俺の意識はLANを通過して、アンドロイドのローカルネットに飽和してゆく。 シーケンス制御が進行するにつれて五感は溶けて、俺の魂はカッサードの『ソウルサーキット』へと転移しはじめた。 「わーだらしのないかお」 「やかましい。カッサード! ゲットレディ!」  俺は、肉体を手放した。  ソウルサーキットに魂が宿ると、五感のとろけるような感覚は失せて、もう一度現実が舞い戻ってくる。  両手を目の前に突き出す。光り輝くスチール製のアームは、まぎれもなくカッサードの両腕だ。いま俺のビジョンにはぽやんとした龍子と、うなだれる俺の抜け殻が見える。  まさに、今の俺はアンドロイドだ。 「約束だ。龍子は俺の身体を守ってくれよ」 「うん」
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