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龍子のぽやんとした返事に不安を抱きつつも、カッサードの俺はエレベーターへ乗った。それから、エレベーターは時々一休みしながら、カッサードの俺をラームの胸部まで運んでいった。エレベーターを離れて、ラームを見上げる。ここで通路は途絶えて、眼下にはただひたすら太平洋が広がるばかりだ。俺は右腕のスプリングワイヤーを、ラームの外壁に打ち込んだ。アンカーは磁力で、がっちりと外壁を掴む。
「外れてくれるなよ。ローンがまだ残ってるんだから」
もう一度、ワイヤーの磁力強度を確かめてから、俺は空中へと飛び跳ねた。ワイヤーが伸び切ったところで、スプリングワイヤーの電源を切り替える。すると、ワイヤーは瞬時に縮み、カッサードを大空へひっぱってゆく。形状記憶合金製のこのワイヤーは、電流のON/OFFで伸び縮みして、アンドロイドを移動させる装置だ。こうした機器を駆使してアンドロイドは危険な作業を行う。
空の旅は、数十秒で終わる。カッサードはクレーンにワイヤーを巻き付けて、ラームの頂上に着地した。ただっぴろい頂上の六角形の中心に、設計図通りのAIハッチの窪みがあった。
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