プロローグ

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16歳の夏だった。学校指定の作業服に身を包んだ俺は、エレベーターの籠に乗って、超巨大ロボットの故障個所へと向かっていた。 「みつきー。こちらりゅーこ。故障個所のチェックおわったよー。やっぱり腕の発電オルタネーターになにかはさまってる。どーぞ修理のプロ」 同級生の龍子(りゅうこ)が、管制室からのんきな声で通信を飛ばしてきた。俺はトランシーバーに向かって言った。 「だれがプロなのさ。故障の状態を確かめ次第、俺のアンドロイドを起動させる。さっさと終わらせちまおう」 「んー。なんだか自信なさそうだね」 「そりゃな。授業でロボの修理は嫌ほどやってるけどよ。全長500mのロボットなんてよく分かんねえよ」  ラームと呼ばれるロボットの上体を見上げ、俺は首を傾げた。馬鹿でけえな、ほんと。この旧ソ連製ロボットは、軌道エレベーターを建造した冷戦時代の遺産だ。今は女王時代。このロボットは古さのせいで故障を起こし、八丈島から動かなくなっちまった。この事態にどういうわけか『女王陛下』は、ロボット学科の高校生でしかない俺と龍子をラームへ呼んだ。「なんで女王さまは、俺らを小間使いに選んだんだろな」
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