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シーケンス制御と意識認証がすんなり上手く行くと、ビジョンの計器コンソールが目の前で瞬き始めた。数値を観測しながら、アンドロイドは自動で立ち上がり始めた。モーター出力も五感装置も、市販のアンドロイドとは段違いだ。水素電解バッテリーにも、五倍以上のエネルギーゲインがある。
レディコードが、アンドロイドのビジョンモニタに映った。
『ミツキ』
カタカナにした俺の名前を使うとは、悪趣味なああああ…… 俺は腹をくくって叫ぶ。
「ミツキ! ゲットレディ!」
その瞬間『あたし』は、ミツキになる。
舞い戻ってきた現実が、緑色の瞳に映る。壊れかけのカッサードと、膝立ちの女王陛下。そして、熱風で揺れる亜麻色の長い髪。目の前に突き出した両手はカッサードのスチール製アームではなく、白く透き通った女の手。あたしのアイデンティティが、崩れてゆく音がどこかで聞こえた。
「ああ、これがあたしなのかよ。やっぱ嫌だ。……って勝手に一人称が勝手に『あたし』になってんだけど! なんでだよお!」
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