第一章

20/38
前へ
/171ページ
次へ
 光希の肉体を背負った龍子は、入り江を離れた山道を走り続けていた。  その後ろからは、追手と化したガードロボットが迫りくる。四輪タイヤと四本の腕をもつそれは龍子の足よりもよっぽど速い。 「こないで!」  龍子はありったけの幻影を放ったらしい。ガードロボは幻影に惑わされ同士討ちを始めた。その間にも、次から次へとガードロボは殺到し、龍子から逃げ場を無くしてゆく。 「みつきの身体は守るって、約束したんだから!」  幻影投射の力でも、ガードロボどものロボ海戦術を食い止めるに、限界があった。とうとうガードロボの雪崩が、龍子に降りかかる。  その瞬間。寸でのところであたしの跳び蹴りが、ガードロボ軍団を刎ね飛ばした。 「女王親衛官ミツキ。およびとあらば即参上ッ!」  あたしは風を巻き上げて、龍子のそばに着地した。 「しつこい男は嫌われっぞ!」  残りのガードロボにスプリングワイヤーを叩き付け、なぎ倒す。こけたガードロボが絡み合って立てないうちに、あたしは龍子を抱き上げて、再び空へと飛びあがった。  入り江を超えた木陰で、龍子を降ろした。不安に身体をこわばらせる龍子へ、あたしはぎこちなく笑った。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加