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新しいアンドロイドで上手く笑えているか、心配だった。
「ごめんな、あんな目に合わせちまって」
龍子はとぼけた顔で聞いてきた。
「見た目は美少女、頭脳はみつきのあなたはだれ?」
「脳波で分かるだろが。あたしは、光希さ。カッサードはぶっ壊れた」
龍子の身体から力が抜ける。あたしは慌てて龍子を支えて抱きとめた。
「おい、大丈夫かよ」
「心配ないよ。わたしに触れようとするおばかさんは、例外なく恐怖に慄いて倒れるの」
幻影能力者は、どんな脅威にも屈しない。たとえ彼女の自由や意識を失わせても、幻影は敵対者へ本能的に暴発し、その脳を破壊する。それを恐れて人は彼女に近づかない。けれど、あたしはそんなことくらいで龍子を嫌いになれない。だって天邪鬼だからな。
龍子の肩を軽くたたいて、あたしは言った。
「ここで待っててくれ。ラームのAIはあたしがなんとかするからさ」
「え。また、行っちゃうの?」
「ああ。そうしないと村が焼ける。しっかし長い髪が邪魔で仕方ねえ」
あたしはレーザーカッターを使って、ワイヤーから短い紐を切り出す。そしてワイヤーを口にくわえながら、後ろに回した腕で髪を一束にしてワイヤーを括り付けた。
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