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そうしてポニーテールになったミツキを、龍子はふやけた顔で見つめていた。
「なんだよ」
「ほんとに美人だね。中身みつきだけど」
「うるせ。なりたくてなったわけじゃない」
「じゃあ、ミツキちゃん。お願いだよ」
「ち、ちゃん付けはやめろよ」
「通信装備は電源入れといてね」
「おうよ」
龍子に手を振って、ミツキはラームへと飛び跳ねてゆく。
港を三本足で踏み潰しながら進撃を続けるラーム。だが、彼女は波止場前で、ふと足を止めた。ラームの進路に、女性型アンドロイドが立ちはだかったからだ。
それは誰だ? ……あたしだっ!
「よくもまあ暴れやがって。お仕置きだぜ」
ひとり言のつもりであたしは言った。が、ラームは突然問いかけてきた。
「君は、だれだ?」
やや面喰う。こいつ、自我があるのか? 今の時代では珍しくないとはいえ、ソビエトのトランジスタAIにまで、自我があるのか。びっくりだ。あたしが手のひらを宙にかざすと、女王の紋章がホログラムで浮かび上がる。白い盾に、紅い薔薇の紋章は、女王の直轄部隊しか使えない特権だ。
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