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「あ、あたしは女王親衛官ミツキ。イレギュラーに告ぐ、今なら許してやるから、大人しくAIハッチを開けな」
こっ恥ずかしいセリフを告げると、ラームは地団太を踏んで、怒り始めた。どすんどすんと、島ごと揺れた気がする。
「ライカはイレギュラーなんかじゃないです! 生まれたばかりのライカを殺さないで!」
「うおお! わ、分かった、わかった! 殺しやしないよ。生まれたての赤ん坊なら、大事に育てなきゃな!」
なだめようと必死に言葉を並べ立てると、ライカは腕を降ろして大人しくなった。
「ほんとう。殺さないのですか、約束ですぞ」
「おうとも。まず、ゆっくり上半身を下げるんだ」
「ぽにょ」
「ぽにょ? なんだそりゃ」
「Понял. ロシア語でりょうかいという意味です」
そう答えてから、素直にラームはあたしの指示に従い、身をかがめる。迫りくる六角柱は怖いが、あっさりと事態を解決出来そうだ。
軌道エレベーターから発射された光線が、ラームのAIハッチへ直撃するまでは、そう思っていた。激しい幻がビジョンモニタで瞬いた。軌道エレベーターが地球へ墜落して、大爆発を引き起こす光景。
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