第一章

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 で。結果的には、あたしは俺に戻れなかった。あたしの抜け殻は、部屋に移動されていた。それは問題ないのだ。だけど。  「こわいよう、おかあさん」 「だれがおかあさんじゃい」  スマホにジャックインさせたライカが、ぐずぐずと文句を言う。こいつのせいだ。生身の俺に戻ろうとしたところ、ライカがうろたえたので、未だ自分はミツキのままである。どうも、あたしは勝手に、ライカのおかあさんになっちまったらしい。 「ぐずぐず言うな、男だろ」 「ライカ、おんなのこです」 「え。マジに?」 「女性名詞だよライカは」  龍子の突っ込みであたしはふにゃる。女性ね。抜け殻の俺を見ながらため息をつく。  続けて龍子は聞いてきた。 「さっきは聞けなかったけどさ。どこのキャベツ畑から拾ってきたのソレ」  と、どこかだるそうに。龍子の瞳は妙に座っていた。 「ラームって名前の土地だ」 「ライカじゃないよ。そのアンドロイドのこと」 「あたしのコレは、さっき女王から受領した」  あたしはぶっきらぼうに答える。龍子の追撃は止まなかった。 「そういえば、昨日この部屋に女王がいたよね。なにしてたの」 「だからなんだ……ちょっとまて、なんでそれを知っている?」  本心の見えない龍子に、あたしはじりじりと追いつめられてゆく。 「もしかしてミツキと女王は深い関係が……?」 「そんなんじゃねえよ、話し合ってただけだ。あーもっ! 海水が機体にべたついて仕方ねえ。風呂で塩を洗い流してから、こんどこそぺイルアウトするぞ」  考えなしに、あたしは立ち上って部屋を後にした。行き先は、大浴場だ。  目的地に着いたあたしは、ぼけっとのれんを見つめた。のれんにはこう書いてある。女湯。  まさか自分がこっちへ入るとは、思わなかった。とはいえ今は女だしなあ。ちなみに真昼間だからか、大浴場には誰もいないようだ。  更衣室でクリーニングボックスに制服をぶちこんでから、あたしは一つの関門にぶち当たった。ブラジャー。これはどう外せばいい。そもそも前なのか後ろなのか。
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