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湯船で尻餅をついたあたしをよそにして、原付バイクは神々しい光を放ちながら宙に浮いている。原付のエンジンはかかったまま。流石はホンダのスーパーカブだ。なんともないぜ。
じゃなくて。これはホンダ製じゃない。光り輝きながら宙を舞うスーパーカブがどこの販売店に置いてある。ひときわ強い光を放つと、スーパーカブはぐにゃりと形を変えて人型へと変わり始める。
光が消え失せた時、そこに女王が居た。カーディガンが吸った水分は、健康的な肢体をくっきり浮かび上がらせる。あたしは、尻餅をついたまま女王へ尋ねる。
「こ、これは女王陛下。何の御用で?」
すると、女王は顔をぐっと近づけてきて真っ赤な顔で命令してきた。
「ぺイルアウトを禁止する。今その義体から抜け出せばあなたは死ぬ」
そう言われてぽかんとしたが、気迫に押されてあたしは手続きを止めた。女王のせいか、ミツキのジャックポッドは緊急停止した。
「ど、どーいうわけか教えてくんない?」
女王は額に手をついて、夜空を見上げた。
「それもこれもテュランノスのせいさ」
その後。わざわざ女王陛下が龍子に服を着せ、更に背負って部屋まで戻った。あたしに任せると何するか分からないと女王はいうのだ。不名誉だ。
「なんだいその恰好は。制服はどうしたんだい」
部屋に入ってから、呆れて女王はあたしに聞いてくる。
それもそのはず。ミツキはタオルを巻いただけの格好でつったっていた。
「クリーニングに出した。持ってきた服はサイズが全く合わないし仕方がない」
特に胸囲が。龍子ほどじゃあないが、このミツキは妙にスタイルが良くて困る。その龍子はというと、ベッドで幸せそうに眠りこけている。ついでにライカもスリープモードになっている。ちなみにベットの下にはあたしの男の抜け殻が落ちていた。ひどい。
「龍子はどうしたっていうんだ」
龍子を見ながらあたしは女王へ聞いた。
「どうも、テュランノスのが龍子さんの意識へ干渉したらしい。奴は人間や機械へ寄生することができる」
「そう、だったのか。それなら合点がいくけど」
「お姉さんは楽しめたかもしれないけどね」
「あんたが入ってこなきゃあもっと楽しめた」
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