第一章

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トランクケースを開けると、俺よりすこしのっぽなロボットは勝手に立ち上がった。むき出しの真っ白な骨格にゴーグルアイ、帯状の青い人工筋肉を纏ったシンプルな姿、それが俺の愛機、カッサードだ。これが危険な現場で人間の代わりに作業を行う『操り人形』だ。こいつの操縦法はかなり特殊で、人間の意識をアンドロイドのソウルサーキットへ移植して操縦する。人形に魂を憑依させる、と言った方が分かりやすいかもしれない。  よし、何も問題はない。内部ハッチを閉めて、あとは自己診断コンソールに任せた。 「へー。アンドロイドの整備も自分でするんだねー」 「ああ。自力でなるたけ修理するのは偽物使いの常識だ。例えばこんな島で故障したら、修理を誰にも頼め……? おい、龍子。いつの間に俺の部屋へ入ってきた」 「んー。さっきからいたよ。でも幻影がちょっと暴走したかもしれないね?」 「こ、このやろ」  龍子はこうやって俺にしょっちゅう絡んでくる。学校では俺以外の誰とも関わらない女子なのに。俺は龍子を友達と思っているけれど、飄々としたこの龍子が俺のことをどう思っているかはわからない。
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