生死は常に隣り合わせ

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そばに居たオスのセミが嬉しげに言う。ジジジジジっというその音は何かを急かしているようだ。彼の言う通りに私も鳴いてみた。私の音はミーン、ミーンという穏やかで鳴り響く音だった。 「どう……かな?」 目の前にいる彼は笑顔で私を見て言う。 「上出来上出来。俺はヤマネって言うんだ。お前は?」 「僕は……」 私が卵として落ちた時に女性の声が空から「あなたはミライって言うの。私たちの分もあなたが大きく育ってね。マイベイビー……」って言ったのを思い出して答える。 「僕はミライ。ヤマネさん、よろしくです」 「さん付けなんてやめろよ。俺らは初めての親友だろ?ここで会ったのがなんかの縁かな?そろそろ行くか。恋探しに。また会おうな」 彼は勢いよく羽を動かし、体を飛ばした。 「またね、ヤ……」 彼の体は黒いくちばしの中にすぽりと入ってしまった。それは黒い羽を高らかに広げ、鋭い目付きをしていた。そして聞き覚えのあるカー、カーと鳴く。 「ヤマネーーーー!!」 鋭い目付きはこちらに向けて言う。 「お前も食われろよ?」 その鋭いくちばしから軽々と回転して交わし、空高く飛んだ私は遠い遠い空の先へと飛んだ。そして私は木にしがみついて親友になった彼のことを思い出して激しく泣き喚いた。 眩しい太陽が私の体を包んで目が覚めた。 「やっと夏が来たな。セミが鳴いてやがるぜ」     
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