生死は常に隣り合わせ

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「セミってミーンミーンって鳴いてる奴、なんか夏が来たってほんまに感じさせてくれるよな」 「えっ?俺、アブラゼミのジジジジジがそうなんだけどな?」 「ミーンミーンだって」 「ジジジジジだってーの!!」 「分かった、こうしよう。ジミーンジミーンって鳴くセミがそれで」 「いいな、それ……っているか!!アホ」 木の下で私よりも大きな明るい色をしている二体のそれがでかい声で話している。どうやら、彼らが言うには今は「夏」という何かである。こんなふうにして私は言葉を習得していった。 また、止まる場所も次第に木から壁、壁から鉄柱、鉄柱から網戸へと移っていった。もちろん、食べる餌も猫や人などによる危険も増えていった。 そして次第に時間が経過していった。 私は徐々に目が見えなくなっていた。それに掴まる手足も弱くなっていた。羽をはばたかせても息遣いが激しくなる。だが、それでも声だけはまだ保っていた。 ミーーン。ミーーーン。ミー……ビビ…ン。 まだ恋してないのに声を失っちゃダメだ。 ジミーン。ジミーン。 変な鳴き声に自分でも驚いた。すると、遠い方から声が聞こえて来る。 「あら、先ほどの音はどこかしら。私、あの音色好きなのに。確かここだと思いましたのに」     
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