生死は常に隣り合わせ

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生死は常に隣り合わせ

それは夏が来る雫の音が聞こえた時だった。大人になった今の私だから分かる。これは「雨」という奴だ。私には家族は居ない。父親の顔も自分をお腹を痛めてまで産んだであろう母親の顔さえ見たことない。ましてやおじいちゃんやおばあちゃんなんて存在するかも不明だ。だってここにはその証拠がない。兄弟や姉妹?そんなものはいるかもしれないが、子どもの時から他人としてすれ違う。だって生まれた時から私たちの目はまだはっきり見えていないのだから。 卵から目覚めた私は「雨」という奴にぶつけられながらも最初の脱皮を行った。その脱皮からほんの少し離れた私は鳥がそれをくわえたのを見ながら静かに地面の中へと潜っていった。 生暖かい柔らかい土は日が立つによって柔らかさが変化していった。そんな土の中で私は何回も自分の皮を剥いだ。そしてある日、無性に土の外へと出たくなった。簡単に言うと、恋がしたくなったのである。 私は土から暖かい空気を受け入れる。どうやら、この時から少し経った大人になった私にはこれを「日差し」ということを理解している。     
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