夏の魔物

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 ぼくが指を鳴らすのに合わせて、二人が目を剥き、口を大きく開けていく。  ぼくは気をよくして、オマケに指を鳴らす。  パチンパチンパチンパチン。  夕暮れの空に、ひゅーっと光の線が登り、轟音と共に弾ける。光の粒が拡がって巨大な花を咲かせる。ドーン、ドーンと夏の象徴がその存在を響かせた。突如として現れた花火に、男子が目を丸くし、思わず言葉がこぼれたといった感じで、「なんだよこれ、すげーな!」と口にし、視線を移して女子に同意を求めた。  だけどベンチにはもう、ぼくと男子の二人しかいない。  夏なのだから、怖い話もあった方がいい。  パチン。                             (了)
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