忘れたフリでも、私の傷は埋まらなかった。

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 漂う消毒薬の匂い。それは私の心を酷く掻き乱した。蘇るのは小学校の時の忌々しい記憶。 「菌が伝染る」そう言われて消毒薬をかけられる。  私の不注意で触ってしまったいじめっ子の机には消毒薬が塗りたくられ、ギラギラと光っている。それを沈黙で取り囲むクラスメイトも、私は大嫌いだった。    その頃は「皆で仲良くしないと駄目だよ?」といういつかの先生の言葉を信じる純粋過ぎる子供だったのだ。子供、と言ってももう5年生。そんな綺麗事を信じ続けるにはもう大きすぎる。でも私はそれを信じたかったのだ。でも自分を嫌うものは嫌う。嫌い返す。私は偽善者だった。  小学校でもぶりっ子と言われ続けた。私はかわいこぶってるほうのだと思い込んでいて、そんなことしてないよ!と言っていたけれど、いいこぶりっこの方だったのだな、と今更気づく。  中学時代は、明るかった性格は失われ、いかにも地味な、漫画のモブキャラにいそうな子供だった。人前で話そうとすると声が震えるようになった。中学受験して得た新しい環境でも私は嫌われた。いじめられることはなかった。まあよく思われてはいなかったのだが。  授業の傍らで、どのように自殺すれば1番楽に死ねるか、それを考えるのが私の日課だった。中三になって友達が出来てからも、自殺願望は相変わらずあった。  ただそれと共に湧き上がって来るのは、いじめっ子への殺意だった。あいつらが生きて、私が死ぬ?そんなのは許せない。でも死んだ方が楽だろうな、とも思った。あいつらが死ぬだけで許されるなんて寒気がした。ただ友達の存在は私の殺人欲求を軽くしたのだった。  そして、私は今高校生になった。中高一貫校なので受験もなかった。友達も増えて、人並みには話せるようになった。リアルも充実していた。ただ、高校からの選抜生、その中にいじめっ子の友達がいた。それくらい何?そう思う人もいるかもしれない。でも、私には大事だったのだ。たちまち忘れようとしていた小学校の記憶が蘇る。中学からの友達にも絶交され、私の中には自殺願望と殺人欲求が残った。そして、ある日、ふと行動に起こして見ることにしたのだった。
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