ナイフと私はとてつもなく壮大な旅に出た。

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 家の物置からサバイバルナイフを拝借し、私はいじめっ子の家へと足を運ぶ。低学年の頃はよく遊びに言っていたその家へと、特に後のことは考えず向かう。ウエストポーチの中にナイフを忍ばせ、冷や汗をかきながらポーチを撫でる。  自分にそんな勇気なんて本当はない。後のことだって何も考えていない。それでも、もう過去に縛られて生きるのはごめんだ。そう思い私は最後の曲がり角を曲がる。風景は前と違って、少し歪んで見えた。あれ?おかしいな。そう思った時にはもう一足遅かった。視界はやがて真っ白に染まり、足は宙を漂い、手は空間を揺蕩う。自分の意思では動かせなくなった身体と、影すら存在しない白い、ただ白い空間。私はもう、精神がおかしくなったのかな、そう思った。そして何故か意識が遠のいてゆくのだった。
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