ナイフと私はとてつもなく壮大な旅に出た。

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 瞼の向こう側から光がじんわりと差し込んでくる。皮膚の血管の色なのか視界は赤く染まっていて、もう先程までの何もない空間ではないことを悟った。  「もう……さっきのとこなんだったんだろ……。変な場所……。」  そう独り言を言いながら閉じていた目をゆっくり開ける。そこには、  「はあ!?ここどこ……?」  草原が広がるばかりで、平凡な住宅街の面影は一ミリもなかった。うちの近所では考えられないような開けた空に、山など一つも見えない地平線。ところどころに見える広葉樹と、辺り一面の草。ここにあるものはただそれだけだった。家は一軒も見当たらない。  「いやいやいや……さすがに夢だって。さっき転びでもしたんかな?」  そう言って頬をつねってみても、痛いだけだ。いや、まさかこの短期間で異国に運ばれた……なんてことはないだろうし。まさかここは異世界……なんてないだろう……。ラノベの読みすぎか、私。自分の考えに吹き出してしまう。異世界だったら魔法とか使えて楽しそうだなあ、ふとそんなことを思い、ふざけて口にした言葉。  「うーん……水……”アクアボール”。なんて言っても何も起きるはずな……!?」  手から大量の水が勢いよく吹き出し、私へと降り注ぐ。それは汗というには多すぎて、この世界に魔法らしきものが存在すると私に教えてくれた。とはいえ、ボールの形には程遠く、練習の必要がありそうだが。 うーん、まあよく分からないけど、取り敢えず異世界生活頑張りますか!
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