第三夜

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第三夜

 こんな夢を見た  私は宙に浮かんでいた。  いや、落ちていたという方が正確かもしれない。  何かないのかと懐を探ると何かが弾けて懐の中身がたくさんとび出た。手帳、カフスボタン、貝のかけら、木偶人形、食べかけのおにぎり。私は手帳を開いた。  私はその手帳を日記として使っていたのだろうか、手帳には日付とその日の出来事などが事細かに綴られており、最後の日付は卯月の朔日、友人について書いてあった。その乱雑の文字からは友人に対する恨みであったり、憎しみであったり、負の感情が滲み出して私の心はひどく苦しくなってしまった。  しかし、そういえばこの手帳をいくら読み返してもこれは誰の手によって書かれたものか皆目見当もつかず、もちろん私が書いたものでもない。そして、何故私の懐に入っていたのだろうか。  うっすら血の滲んだ手帳を破り捨てて目を瞑った。  風を感じる、皮膚を刺す風は雨が降っていたかのように湿っている。  目を開けるとそこにはもううっすら地面が見えて来るだろう。
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