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第六夜
こんな夢を見た
麻袋を担いで道を歩いていた。
その大きな麻袋の中には昨夜私が殺した権次郎という男(それもものすごく嫌味で腹の立つ男だった)が入っていて、彼を殺してしまったことになんの罪悪感も感じてない私でさえもそれが世間からは認められていない行為だということは理解していた。
だから私は道を歩いていた。
山の中深い林道を歩き続けた。少しばかり長い時間歩き続けた。
ここら辺でいいかと林の中に少しばかり入って穴を掘り始めた。朝までには家に帰らないといけないなと思いながら一心に掘っていた。
その時、足音が聞こえた。ザッザッザッと草履と地面がこすれる音が深夜の暗闇に響いた。
その主は私を見つけたのか小道にそれたようで、少しずつ確実に私との距離を詰めていった。
お手伝いいたしましょうか、と足音の主は訪ねた。
別に悪い人ではなさそうであったがいい人でもなさそうだったので手伝ってもらっても構わないだろうと思ったので
頼むよと答えた。
そんなこともあって大きな穴を掘ることができた。
目的の麻袋を放り込み土をかぶせていった。
そして朝日がうっすらと木々の隙間から漏れる頃には埋め終わった。当分は見つからないだろう。少なくとも私の知り合いが全員がその麻袋の存在を知らずに寿命を迎えられるほどには。そして私は顔をあげた。
ありがとうございました、と手伝ってくれた足音の主に言うと、
いえいえ、と返された。
ところで何を埋めてたんですか?
足音の主も顔を上げた。
その顔は私のよく見知った顔、嫌味な権次郎の顔であった。
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