5.画策

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5.画策

 「大臣、あそこまで話してしまって…。天羽巡査は信用できますか」  翔が辞した病室で、秘書の石田が福住光太郎に訊いた。  光太郎は頷いた。「スペース・ポリスの件か? 心配ない。彼なら大丈夫だ。こんな荒唐無稽な話を周囲に触れ回るほど、彼は馬鹿ではないよ」  石田はまだ不服そうな顔をしている。  「それに大事なことは何一つ話していない。それに、この部屋の盗聴防止は完璧だ。何か問題でも?」  「大臣はスペース・ポリスのメンバーに選出されると約束されました。ですが、今回は政治的な要素を抜いて、純粋に優秀な人材を選ぶと宣言されたのは大臣自身です。この最終選考の段階で、天羽巡査をいきなりプッシュすると選考委員会に顔が立ちません」  「…」  光太郎は渋面を作った。石田の指摘は正鵠を得ていた。日本代表として選出されるスペース・ポリス第一陣は、本当に優秀な人間でなければならない。そのため、福住は「一切のコネを排除するように」と選考委に厳命していたのだ。  「それについては考えがある。山際先生に電話をしてくれ」  石田は質問を挟まずに、光太郎の指示に従った。盗聴防止処理を施してある大臣専用の携帯電話を操作して、山際大二郎を呼び出した。  「山際先生でいらっしゃいますか。福住光太郎の秘書の石田です。ご無沙汰致しております。はい、大臣は順調に回復されています。はい、心配ありません。はい、大臣は今隣におられます。山際先生にお話があるとのことですが、お時間はよろしいでしょうか」  石田は携帯電話を光太郎に差し出した。
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