3.開港式

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3.開港式

 日の丸をつけた政府専用機が、宇宙港の主滑走路に降り立った。時間は午前十一時十分前。タラップから下りてくる中務信一郎(なかつかさ・しんいちろう)首相の姿が、十一時のニュースに流れるように、到着時刻を計算したのだ。今日一日は、朝から晩まで、日本中のニュース番組が、競って宇宙港開港の模様を伝えるはずだ。お祭りはすでに始まっていた。  「警備現本(現地本部)から一斉に送る」  天羽翔のイヤホンに、無線機の音声が飛び込んできた。声の主は翔が属している警備班の班長・木元栄三(きもと・えいぞう)警部だ。緊張感が短い通話の中からも伝わってくる。  「マルP、マルMともにターミナルに入った。各自、レベル3の警戒態勢に入れ」  マルPは、通常、警察無線ではポリスマン(警察官)を指すが、この場合はプライム・ミニスター、つまり中務精三首相を指す符号として使われていた。マルMはミニスター、福住光太郎大臣だ。レベル3は最高ランクの警戒を意味する。貴賓の到着で警備はいよいよ本番態勢に入ったのだ。
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