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「山際先生、福住です。このたびはご心配をお掛け致しました」
「福住大臣、心配したぞ。国家機密と分かってはいるが、怪我の具合はどうかね」
電話からはいつもの重厚感のある声が聞こえてきた。光太郎はこの山際の声が好きだった。
「はい、怪我自体はたいしたことありません。二、三日で公務に復帰できるレベルです。それより宇宙港ですが」
「まずは大臣に大事がなくてなによりだ。首相は残念だったが…。宇宙港の方も大丈夫だよ。主要施設は無傷だ。ターミナルみたいな飾り物を爆破するとは、テロリストは何を考えているんだか、さっぱり分からんよ。恐らく、これはデモンストレーションだな」
「これからは宇宙港には指一本触れさせません」
「そうありたいものだな。ただでさえ物騒になるんだから。ところで、今日はどうしたのかね。病院から電話してくるとは、余程の緊急事態なんだろう?」
「実は…」
光太郎は少し言いよどんだが、意を決して話し始めた。
「先ほどまで天羽翔君がこの病室におりました」
「天羽が…。どうして。君が呼んだのか。命の恩人を」
「いいえ。彼が同僚を見舞っているところを、偶然石田が見掛けまして」
「どうだ、元気にやっているか。彼の怪我は軽かったんだろう?」
「実は、彼にスペース・ポリスのことを話しました。二カ月後に、スペース・ポリスに招集されるとも伝えました」
山際はすぐに返答しなかった。二人の間を沈黙が支配した。
「確かに彼は優秀だ」
話し始めたのは山際だった。
「しかし、もう三次選考まで進んでいるんだぞ。これから天羽をねじ込むのは難しいんじゃないか」
「分かっています。石田にも同じことを指摘されました」
「それでは、どうしようと言うのだね」
「ひとつだけ方法があります。通常のスペース・ポリスでは難しいですが、天羽君はもう一つの要員ということで…」
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